アニメーション版・心の理論課題|発達障害心理アセスメント ソフトウエア|DIK教育出版
アニメーション版 心の理論課題

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相手の立場になるって、どんなこと?

心の理論課題 活用事例(2)

香川大学教育学部附属特別支援学校
臨床発達心理士 西村健一

特別支援学校での心の理論課題活用事例

教育現場で「心の理論課題」を活用するには

私は今まで特別支援学校や小学校で発達障害のある子どもたちへの支援を行ってきました。ここでは、学校という教育現場で心の理論課題を活用する方法と実践例を紹介したいと思います。


人とのかかわり方を、どう支援するか?


学校は友達や先生など多くの人と一緒に過ごす場所です。授業や休み時間を通して子どもたちは人とのかかわり方を学んでいきます。しかし、発達障害のある子どもたちの中には友達とのかかわりがうまくもてない子もいます。相手の気持ちにかかわらず一方的に話し続けてしまう、友達が嫌がることを言う、相手からのかかわりを被害的に受け取ってしまうなど状況は様々です。

それでは、人とのかかわり方について、どのように支援をしていけばよいのでしょうか?これまで、さまざまな方法が開発されてきました。例えばソーシャルストーリーズ、コミック会話などが紹介されています。しかし、人とのかかわりを支援する際に、どの支援方法を選び、どのように実施するのかという判断は難しいのです。発達障害の人には、知的なレベルは高くても相手の気持ちを察することを苦手とする人が多くいます。つまり、IQが◎◎の程度だから▽▽の支援を行えばよいというように、知的な能力でかかわりに関する支援を決めるわけにはいかないのです。

さらに、障害名だけから支援を判断することも難しいでしょう。私は職業柄多くの自閉症の人とかかわってきました。確かに彼らは人とのかかわり方に特徴があり上手ではありません。しかし、全員に同じ支援が効果的かどうかは分からないのです。


ものさしが必要


そこで、人とのかかわりの支援を選ぶ上で利用できる“ものさし”が必要となってきます。例えば、相手の考えていることや気持ちを正しく推測できるかどうは大きなポイントです。相手の気持ちを考えることが難しいにもかかわらず「相手の嫌がることをしてはいけません」といったことをいくら言っても効果はあまり期待できないでしょう。また、相手の気持ちが推測できる状態にある子どもには、「◎◎すると相手は■■の気持ちになる」と伝えることで、より理解が深まるでしょう。心の理論課題は、周りの人の気持ちを“読めるのか”ということを知るための一つの道具として使えるかも知れません。


心の理論課題の使い方について


心の理論課題は、このソフトウエアの作者・藤野先生の文章にあるように、他者の考えを推測できるのかということを判断することを目的としていますが、私は答え方にも注目するようにしています。

問題を最後まで読まずに答える子ども、登場人物の服の色にこだわる子ども、何度も先生に答えを求めてくる子ども、パソコンのファンのかすかな音が気になると訴えてくる子ども、最初は集中してもすぐに飽きてしまう子ども・・・・。その答え方から支援の方法が見えてくることもあるのです。「この子は集中する時間が短いから、より短い時間でできる支援方法がいいかな」「細かいところに注目する傾向があるから、挿絵は線画にしよう」といったことを考えるヒントになります。

また、心の理論課題だけの結果から支援を決めるのではなく、必ず他の心理検査や行動の記録なども含めて考えるようにしています。多方面からの,出来るだけ多くの情報を総合して,いろいろな視点から子どもを見ていくことで、支援のアイディアが膨らんでくるからです。


実際の活用方法について


私は今まで300人以上の子どもたちに、この心の理論課題を行い、支援方法を探ってきました。ここで実際の支援について紹介します。

友達をからかうことでトラブルを起こす太郎さんの場合

太郎さんは軽度の発達障害がある中学校2年生です。友達の容姿の特徴を見つけ「出っ歯の▽」「のっぽの■」などと見たまま,感じたままに言ってからかうことが多く、逆に相手から言い返されると逆上してトラブルになることがありました。

そこで、太郎さんへの支援を探るため、心の理論課題を行いました。ボールの課題、トランプの課題など一次誤信念課題はできたのですが、その他全ての課題を失敗しました。この結果から、太郎さんの場合は複雑ではなく単純な場面において、相手の考えを把握することができることが分かりました。そこで、支援方法のアイディアとしては、太郎さんの生活の中から特定の場面を取り上げ、「うれしい」「かなしい」といった分かりやすい相手の感情を関連させながら望ましいかかわり方を教えていくということが考えられました。

併せて、田中ビネー、AA-PEP、S-M社会能力検査などを分析しました。その結果、簡単なやりとりを通して事実を理解する力があるということが分かってきました。また、行動の記録からは、友達が嫌がることを言うことで、友達の表情や反応を楽しんでいることが予想されました。心の理論課題の結果と合わせて考えると、「自分のかかわり方によって相手の気持ちが変わる」ことが理解できはじめているということになります。以上のことから、できるだけシンプルな内容を取り上げ、望ましい行動と相手の気持ちを関連させながら教えていくことにしました。

太郎さんには「学校の選挙で選ばれて学校の生徒会に入る」という夢がありました。そこで、先生は太郎さんに「生徒会役員に選ばれる方法を太郎さんに教えてあげます。みんなの人気者になって、生徒会選挙でみんなから投票してもらうのです。どうすればいいでしょうか?」と尋ねました。すると、太郎さんの口からは「生徒会の○○先輩と同じようにすること」といったコメントがでてきます。「○○先輩はどんなことをしていますか?」という問いには「○○先輩は、後輩の手伝いをしたり、学校の掃除をしたりしている」と答えます。「そうですね。○○先輩がいいことをしたら、みんなはどう思っているかな?」と尋ねると「うれしい気持ち」と答えました。「そうだね。先生と一緒に、みんながうれしい気持ちになって、太郎さんが人気者になれる方法を考えよう」ということになりました。

太郎さんはインターネットを利用して天気予報を調べるのが好きでした。そこで、友達や先生に「今日はお昼から雨が上がるよ。降水確率は10%。」「明日から雨になるから、傘がいるよ。降水確率は70%。」など最新の情報を伝えるようにしたのです。するとみんなから「本当?ありがとう」とお礼を言われることが増えてきます。良いことで注目されるようになると、人をからかうことは減っていきました。その後は、友達がうれしくなる言葉と嫌がる言葉を一緒に考えたり、友達と仲良く話しているときに称賛したりするようにしてきました。

現在太郎さんは、友達とのトラブルがほとんどありません。念願の生徒会の役員にも選ばれ充実した学校生活を送っています。


まとめ


教育現場での心の理論課題に関する実践について紹介をしました。心の理論の注目度は年々高まってきています。この、「心の理論課題の活用アイディア」は子どもの数だけあると思います。ぜひ活用し、実践をしていただければと思います。


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